天仙液

個人的に、がんというと真っ先に連想するのがこの「天仙液」。肺がんで亡くなった父が信奉していた。もう十年以上が経つけれど今でも実家には埃を被ったこれの箱が残っている。細々としたものを入れるのに、当時山ほどあった空き箱を母が使って、そのままになっているから。

天仙液の効能は代理店のサイトや、Wiki@王振国にあるのでここでは書かない。

結論から言うとこれを信頼して飲んでいた私の父は亡くなった。実際に天仙液のおかげで癌が治った人がいるなら、その存在は否定しない。けれど私の父に関しては、天仙液は効かなかった。効果も当人の心理的なもの以外ははなかったと思う。
まあ、もし父の病気が治っていたら、今は正反対のことを思い布教していたかもしれないけれど、少なくともこれが現実。

がんの情報のサイトはネットで検索すると山ほどあるけれど、正直ほとんどは広告や売ることを意識した褒め言葉ばかりだと思う。天仙液もアフィリエイトシステムで広告を出している。そのため個人のブログで褒めている記事も見かける。大体無料サンプルのバナーかリンクがある。本屋に行けば、下の本も売っている。当然いいことしか書いてない。

 がんを治す新漢方療法 [ 王振国 ]

このブログにもアフィリエイト広告が貼ってあるけれど、私はそれのために嘘までは書くつもりはない。天仙液に関してだけでなく他のものに関しても、知っている範囲、調べた範囲、事実を書くつもりだ。

うちの父のことを書くと、当時はまだパソコンも今ほどには普及していなかったので、FAXと電話とで代理店に申し込んで購入していた。一日3本×30日分だったかでひと月15万くらいはかかっていたらしい。病院の入院や手術や諸々の費用、それ以外のサプリや生活費に加えて、この負担だ。母はその経済的な負担の方を気にして愚痴ることもあった。

一方で患者である父の方は、その値段ゆえに「効く気がする」と言っていた。細いドリンク剤くらいの瓶の1本で数千円の価値がある特別な薬草と信じたから、毎日、病院でも医者の目を盗んで飲んでいた。もしこれがひと月で数千円程度のものだったら、父にとってありがたみはなかったかもしれない。

高価だから効くのか、効くから高価なのか、効くように見せかけるために高価にするのか。

その判断は断定できない部分だけれど、実際身内としては、本人が信じていたのなら、止められないものだ。自己暗示でも病気がよくなればと思うと否定できない部分もある。余命のわずかな病人の希望は叶えてやりたい、できるだけのことをしてやりたい、と思う気持ちもある。

結果的に父は亡くなったけれど、本人の思い通りにしてやったという点では、「やるだけのことはやった」と思えているのも事実で、その面の後悔はない。

一方、この天仙液がそうと言うのではないけれど、そんな患者や家族の心理をついている商品が横行しているのも、がんの分野では珍しくない。

多分、ネットでこういうものの情報を探している人も身内や自分ががんに直面して、迷っているからだと思う。そういう人に私が言えるのは、上に書いたような家族の事実と、本人の気持ち次第だろうということ。

飲まなかった/飲ませなかったら後悔すると思えば試せばいい。助かる可能性があるかもしれないと言われたら、その誘惑を断ち切るのは難しいから。

否定できるなら否定すればいい。信用していない人に効くとは言わない。個人的には私も効くとは思っていない。「現時点ではまだ日本では認可されていない」と煽っているけれど、十年前も同じことを言っていた。多分十年後も同じだろう。その間に国に正式に認可された薬はいくつもある。

もし金銭的な事情などで飲ませたくても無理だという場合なら、現時点で癌に効く薬はないという現実を思い出してほしい。どんな有名人、資産家、偉人も亡くなっている。私の父のように効果のなかった人の例も、「どうせ飲んでも駄目なのだ」と慰めにはなるかもしれない。

逆に今飲んでいる人がいるなら、うちの父とは違ってその人には効くようにと願っている。